(1)2023年法改正情報まとめ

2023年注目の法改正

人事・研修関連の担当者の皆さまが特に注目したい2023年に行われる法改正を紹介します。

各法2023年改正部分について【施行日】と「★改正のポイント」をまとめました。

 

本記事の内容は、都度更新してまいります。
更新情報や関連ニュースをメールでお届けいたしますので、ぜひご購読ください。
(最終更新日:2022年11月30日)

<法改正情報 目次>

この記事で取り上げた法関連改正

育児・介護休業法関連の改正

男女とも仕事と育児を両立できるように、産後パパ育休制度の創設や雇用環境整備、個別周知・意向確認の措置の義務化などの法改正が、2022年4月から3段階で施行されています。
2023年4月には、育児休業取得状況の公表が義務化されます。

 

★改正のポイント

  • 従業員数1,000人を超える事業主に対する育児休業取得状況の公表が義務化されます。
  • 従業員数1,000人超の事業主は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられます。
  • 公表内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。
  • 取得率の算定期間は、公表を行う日の属する事業年度(会計年度)の直前の事業年度です。

◆この法律や法律の改正で、確認・検討すべきこと

  • 育児休業等の取得の状況は、インターネットの利用等、一般の方が閲覧できる方法での公表が必要です。自社のホームページ等のほか、厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」で公表する方法もあります。

育児・介護休業法の改正についてはこちらの記事で取り上げていますので、詳しくはこちらをご覧ください。

参照:厚生労働省 育児・介護休業法改正ポイントのご案内

 

誰もが産休・育休をとりやすい職場にするには、マタハラやパタハラ防止に向けた全社員教育・研修が有効です。弊社の「マタハラ防止・パタハラ防止eラーニング」 は、マタハラNet創設者であり、元代表理事小酒部さやか氏監修のもと、受講者がマタハラ・パタハラの防止に関する正しい知識と認識を身に付けることができるよう、ポイントをわかりやすくまとめています。実際に、男性の育休取得率アップの取り組みとして研修を導入いただいた事例もございます。
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賃金支払いに関連する労働基準法等の改正

1.2023年4月に、中小企業に対する割増賃金率の適用猶予措置が廃止されます。

改正内容を確認しておきましょう。(大企業は2010年4月から適用済です。)

★改正のポイント

  • 月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が50%に引き上げられます。
  • 2023年4月1日からの労働時間が対象となります。
  • 月60時間を超える時間外労働を深夜に行う場合、深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%=75%となります。
  • 月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日に行った労働時間は含まれませんが、それ以外の休日に行った労働時間は含まれます。
  • 引き上げ分の割増賃金の支払いの代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。

 

◆この法律や法律の改正で、確認・検討すべきこと

  • 割増賃金に関する就業規則の変更が必要となる場合があります。
  • 就業規則の改正や勤怠管理システムの導入・変更の費用について、「働き方改革推進支援助成金」「業務改善助成金」を活用できる場合があります。

 

参照: 中小企業庁 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます

 

2.2023年4月から、賃金のデジタルマネーでの支払いが解禁されます。

労働基準法では、賃金は現金での直接払いを原則とし、例外的に労働基準法施行規則で銀行・証券総合口座への振り込みも認めています。今回の同規則の改正により、労働者が保有する資金移動業者のアカウント(〇〇ペイなどのスマートフォン決済アプリ口座)を賃金の支払先として選択できるようになります。

 

施行は2023年4月1日ですが、要件を満たした資金移動業者を厚生労働省が指定する必要があるため、実際に活用が始まるのは施行から数か月後の見込みです。

 

★改正のポイント

  • 賃金の支払い方法として、デジタルマネーが選択できるようになります。
  • 資金移動業者を利用した賃金の支払いは労使協定を締結のうえ、労働者が希望して同意した場合に限られます。
  • 企業側は資金移動業者を賃金の支払先として設定する場合にも、銀行口座や証券総合口座への支払の選択肢も併せて提示する必要があります。
  • 現金化できないポイントや暗号資産(仮想通貨)での支払いは認められません。
  • 労働者の資金移動業者の口座残高は100万円を上限とし、保護されます。そのため、残高100万円を超える分については、アカウントに紐づけた銀行口座への振り込みなどの措置を講じている資金移動業者であることが必要になります。

 

◆この法律や法律の改正で、確認・検討すべきこと

  • 就業規則の変更、給与支払いシステムの導入・変更などが必要になる場合があります。
  • 現時点での賃金のデジタルマネーによる支払いは、導入による企業側・労働者側それぞれのメリット・デメリットをよく検討し、双方合意したうえでの慎重な導入が必要です。

 

参照: 労働基準法施行規則の一部を改正する省令案の概要 厚生労働省 第181回分科会資料

 

インボイス制度に関連する所得税法等の改正

2023年10月1日から、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されます。

平成元年(1989年)に導入された消費税は、令和元年(2019年)の10%への税率引き上げに伴い導入された軽減税率制度により、8%と10%の複数税率制度となりました。

インボイス制度とは、この複数税率制度に対応した消費税の仕入税額控除の方式のことで、インボイス(適格請求書)は、売り手が買い手に正確な適用税率や消費税額等を伝える手段となります。

課税事業者は、仕入税額控除の適用を受けるために、これまでの請求書・領収書等に代えて、インボイスの交付・受領・保管が必要になります。

課税事業者である大多数の企業で、売り手として、買い手として、それぞれ多くの準備が必要です。制度内容を確認して制度の開始に備えましょう。

★改正のポイント

  • インボイスは、税務署長の登録を受けた課税事業者のみが交付できます。登録を受けるためには、登録申請手続きが必要です。
  • インボイスには、登録番号のほか、一定の事項を記載する必要があります。請求書や納品書、領収書、レシート等、その名称は問いません。記載事項を記録した電子データで提供することも可能です。
  • 登録を受けた事業者には、インボイスを交付する義務が生じます。交付することが困難な鉄道・バス・船舶等による旅客の運送や自動販売機などの取引のみ、特例として交付義務が免除されます。
  • 仕入税額控除の適用を受けるためには、インボイス等の保存が必要となります。交付したインボイスの写しを7年間保存する必要があります。この場合、写しとは記載事項が確認できる一覧表・明細表などでも構いません。
  • 税額計算の方法が変わります。2023年10月1日以降の売上税額及び仕入税額の計算は、「積上げ計算」または「割戻し計算」を選択できます。
  • 免税事業者や消費者など、適格請求書(インボイス)発行事業者以外の者から行った課税仕入れは、原則として仕入税額控除の適用を受けることができません。ただし、制度開始後6年間は、一定割合を仕入税額として控除できる経過措置が設けられています。

 

◆この法律や法律の改正で、確認・検討すべきこと

  • 仕入税額控除の適用を希望する課税事業者は、2023年3月31日までに適格請求書発行事業者の登録申請手続きを行う必要があります。
  • 取引に使用する請求書・納品書・領収書等を、インボイスの登録番号を含む6つの必須項目が記載された書式に変更する必要があります。取引ごとにどのような書類を交付しているか確認し、必要な改訂を行う必要があります。また、どの書類をインボイスとするか、取引先と認識を共有しておきましょう。書類の改訂にあたっては、売上税額の計算方法も検討しましょう。
  • 交付したインボイスの写しの保存方法を検討する必要があります。写しの保存はコピーに限られません。電子データや一覧表形式、ジャーナル、複写式の控えなども認められます。
  • 自社の仕入れ・経費について、インボイスが必要な取引かどうかを確認し、制度開始後どうするかを検討しましょう。継続的な取引については、仕入先から受け取る請求書等が記載事項を満たしているかを確認し、必要に応じて仕入先と相談しましょう。
  • 仕入先である免税事業者との取引について、インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことそれ自体が、直ちに問題となるものではありませんが、見直しに当たっては、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に該当する行為を行わないよう注意が必要です。
  • 受け取った請求書類等をどのように保存・管理するかの検討が必要です。請求書を登録番号のありなしで区分して管理できることが重要です。合わせて帳簿への記載方法や仕入税額の計算方法を検討しましょう。
  • 事業上の商取引だけでなく、什器や事務用品の購入、旅費その他の経費精算など、消費税の生じる活動には原則としてインボイスが必要になりますので、全従業員への制度変更の周知徹底が必要です。

参照;国税庁 適格請求書等保存方式の概要インボイス制度の概要(国税庁)

(2)2023年イベントカレンダー

2022年の実績をベースに、2023年に開催が予想される人事・研修担当者が注目したいイベントをまとめました。

※今回掲載したものであっても2023年は実施されない場合もありますので、詳細は定期的に所管となる官公庁サイトの「年間行事予定」で確認してください。(掲出するリンクは2022年の実施記事です)

2月

3月

4月

5月

6月

7月

9月

10月

11月

12月

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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