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eラーニングをもっと活用するための、「評価」重視のPDCAの回し方

PDCAはビジネスの多くのシーンで重要な考え方ですが、企業の教育施策においても、例外ではありません。たとえば、継続的な教育施策の一部として毎年eラーニングを実施する場合、PDCAの各項目として、下記のようなことが考えられます。

PDCAサイクル
  • P:研修企画・設計書の作成と承認
    (研修企画書テンプレートのサンプルはこちらからご覧いただけます)
  • D:eラーニングの原稿作成から実施
  • C:eラーニング実施時に取得したデータをもとに、学習結果と施策の評価
  • A:評価をふまえて、次回以降の教育施策に向けた改善

というようなイメージです。

しかし、PDCAをきちんと回し、成果を上げていく(教育施策であれば、教育効果を高めていく)ことは、実際には非常に難しいものです。

eラーニングはその特性から、量的側面においては集合研修よりも多くの評価標を得やすいといえます。
一方、ブーム(と営業担当の口車)に乗ってビッグデータの取得と分析を試みたものの、ほとんどの結果が既知の傾向を確認できた程度で、費用対効果の面からも期待したほどの改善には至らなかったというご担当者様のお話も聞きます。
「eラーニングを導入しても、適切な施策の評価ができているとはいえない」状況に陥ってしまうのはなぜでしょうか。

「とりあえずのデータ取得」では、評価はできない

「とりあえず、データをとっておこう」という感覚で、eラーニングのアンケート項目や学習履歴データを取得しているというケースは、おそらく少ないでしょう。(もし、「あ、当社はそうかも…」と思った方がいらっしゃれば、早急な改善が必要です!)

しかし、「とりあえず」という意識はなかったにせよ、実態は適切なデータを取得できておらず、十分な評価ができていないケースは散見されます。こうしたケースには、共通して以下のような背景があるようです。

  • 社内の教育担当を引き継いだばかりで、どのようなデータを取得すればよいのかわからない
  • 前任者が設定したアンケート項目や学習履歴データの項目を、内容を理解せずそのまま使っている
  • 上司や他部署から依頼のあった調査項目を、そのまま採用してしまっている

eラーニングで取得する各種データは、「このアンケート項目や履歴データで、どのような結果がでれば、eラーニングの学習目標や施策目標が達成できたといえますか?」という質問に回答できるものになっていなければ、取得する意味がありません。

では、評価につながるデータとはどのようなものであるかを、いつ・どのように検討、設定すればよいのでしょうか。

「事後的な評価」ではなく、企画段階で評価方法と評価基準をシャープにする

eラーニングにおける「適切な評価方法と評価基準」には、唯一の正答はありません。なぜなら、評価方法や評価基準は教育施策の目標、およびeラーニングの学習目標に紐づいて設定されるべきものであり、その目標は各社で異なるためです。

つまり、評価方法と評価基準の適切さは、施策目標や学習目標に照らし合わせることで初めて判断できるものなのです。これをふまえて、教育施策のPDCAサイクルにおいて「評価」と「次回施策に向けた改善」を実現するには、以下がポイントとなります。

  1. 研修企画・設計書で、目標に対する評価方法(評価基準を含む)を明示し、承認を得る
  2. 教育施策の「目標」と、eラーニングの「学習目標」を分け、評価方法も個別で考える

1.研修企画・設計書で、目標に対する評価方法(評価基準を含む)を明示し、承認を得る

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これは、計画【P】の段階で評価【C】と、改善【A】を回す仕組みを盛り込んでおく、ということです。
ありがちなのは、eラーニングの原稿作成時(【D】にあたります)にはじめてアンケート項目や履歴データを考える方法ですが、このような進め方だと、評価は事後的なものになってしまいます(「とりあえずデータをとっておこう」という進め方は、得てしてこのケースです)。

また、計画(企画)段階で評価方法について共通認識を持てていないと、教材作成を進めるなかで、さまざまな社内事情から教材内容の変更やアンケート項目、学習履歴データへの変更が入り、結果として「本来やりたかった評価」ができない、といったことも起こり得ます。

まずは入り口(目標)と出口(評価方法)を確定し、それをどう実現するかという視点で施策や学習内容を検討していくことで、教育効果の高いeラーニング、意味のある教育施策が実現されます。

2.教育施策の「目標」と、eラーニングの「学習目標」を分け、評価方法も分けて考える

教育施策の「目標」とは一連の教育研修における目標です。一方で、教育施策の一手段であるeラーニングの「学習目標」とは、eラーニングの学習ゴールです。
たとえば、「ハラスメント防止」についての教育施策を実施し、その一手段としてeラーニングを採用したケースでは、以下のように分けることができます。

教育施策の目標と評価方法

  • 目標:ハラスメントに対する全社員の意識向上と、ハラスメントが発生してしまったときにどのような対応がなされているかどうかの現状確認
  • 評価方法:
    全社員がハラスメント防止eラーニングを受講する(修了率90%以上)
    eラーニングの修了条件の1つであるアンケートで「ハラスメント発生時の対応状況」を設け、自社の実態を把握する(5段階評価およびフリーコメント)

eラーニングの学習目標と評価方法

  • 学習目標:「ハラスメント」の定義を知り、具体的NG言動を理解する
  • 評価方法:確認テストで満点をとる(再回答あり)

施策の目標のひとつが「現状確認」であるならば、評価のために現状確認のためのデータの取得が必要になります。これを実現する手段として、eラーニングを「学習教材」としてだけでなく、実体把握のツールとして使う、ということが企画の段階で決定し、承認が得られていれば、そのような設計のeラーニング教材を作成できる可能性は高まります。

いずれの場合でも、「目標(教育施策の目標、学習目標)」とそれに紐づく「評価方法」を企画段階で明確にすることで、eラーニングの教育効果を高め、教育施策全体の適切なPDCAを実現することができるのです。

そしてそれこそが、「eラーニングを活用できている」状態だといえるでしょう。

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