ハラスメント防止につながる アクティブ・バイスタンダーアプローチ
当社で実施しているハラスメント防止研修のアンケート結果をみると、「ハラスメントの加害者は、自分が加害者になっていることに気づいていない」「加害者が気づかないと、ハラスメント問題は解決しようがない」といった声をたびたび見かけます。実際、ハラスメントはそのほとんどが無自覚に行われており、多くの行為者は「自分の行為がハラスメントになっている」という認識を持っていません。そのことが、ハラスメント問題を解決しづらくしている、という点は残念ながら否めません。
このような状況を変えていくには、複数人から同じような指摘を受けることが、自分の言動を見直すきっかけとなることもまた、わかってきています。そのための効果的なアプローチとして注目されているのが「アクティブ・バイスタンダー(行動する傍観者)」という考え方です。
アクティブ・バイスタンダーとは
「バイスタンダー(Bystander)」とは、傍観者や第三者を意味します。「アクティブ(Active)」という言葉が付くことで、ハラスメントを見聞きしたときに見過ごすのではなく、積極的に行動する人を指す言葉となります。アクティブ・バイスタンダーの概念は、「ハラスメントは当事者だけの問題ではなく、組織全体の問題である」という認識に基づいています。第三者の介入が、ハラスメントの連鎖を断ち切る重要な役割を果たすのです。
アクティブ・バイスタンダー:5つの介入方法(5つのD)
アクティブ・バイスタンダーとして行動するための具体的な方法として、「5つのD」が提唱されています。それぞれの方法には特徴があり、状況や自分の立場に応じて選択できる点が大きな特長です。
1. 注意をそらす(Distract) |
実践例:行為者に「ちょっと手伝ってもらえますか?」と声をかけ、注意をそらす |
2. 直接介入する(Direct) |
実践例:「そのような冗談は不快に感じる人もいるかもしれません」と注意をする |
3. 第三者に助けを求める(Delegate) |
実践例:人事部や相談窓口などの専門部署に報告する |
4. あとでフォローする(Delay) |
実践例:被害者に声をかけて、必要とするサポートを提供する |
5. 証拠を残す(Document) |
実践例:組織のポリシーに従って適切に記録を残す |
アクティブ・バイスタンダーの重要性
アクティブ・バイスタンダーの取り組みが重要な理由はいくつかあります:
- 抑止効果がある: 第三者が介入することでハラスメント行為が抑制される、行為者に自身の不適切な行為に気づくきっかけを与えられる
- 被害の拡大を防ぐ: 早期介入によって、ハラスメント行為がエスカレートする前に対処できる
- 組織文化の改善: 積極的に行動する人が増えることが、働きやすい職場づくりにつながる
- 多様な選択肢: 5つの方法から自分に合った介入方法を選べる
アクティブ・バイスタンダーの考え方で重要なのは、一人ひとりが自分のとれそうな方法を選び、実行していけるという点です。すべての介入方法を完璧に実践する必要はなく、自分の立場や状況に応じて、「できることから始められる」ことが重要なポイントです。
当社の「【標準レッスン】ハラスメント防止研修2025」でも、アクティブ・バイスタンダーの内容についてクイズを通して解説しています。

この教材で、ハラスメント防止についての基礎知識から、一人ひとりが実践できる「アクティブ・バイスタンダー」のポイントを押さえるところまで、新たな視点での研修が実施できますので、まずはぜひ、教材サンプルをご覧ください。