【2026年施行予定】公益通報者保護法の改正について
企業の内部通報制度は、職場の不正や法令違反を早期に発見し未然に防ぐための仕組みです。しかし、これまで通報者が保護されないケースなどもあり、制度の実効性に課題がありました。
こうした背景を受け、2025年6月に公益通報者保護法の改正法が成立・公布されました。公布から1年半以内の2026年中に施行される予定です。今回はこの改正法の概要を確認し、関連する当社のeラーニングもご紹介します。
押さえておきたい公益通報者保護法の改正のポイント
改正法では、通報者への不利益な取扱いの禁止が強化されました。また、通報者として保護される対象の範囲が拡大しました。主なポイントをみてみましょう。
1.不当な解雇・懲戒に対する刑事罰の導入
通報を理由とした解雇及び懲戒は無効です。これに違反して、通報を理由として解雇または懲戒をした者(代表者や従業員などの個人)に6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、法人に3,000万円以下の罰金の刑事罰を科す規定が新設されました。また、通報者が、通報から1年以内に解雇または懲戒された場合には、「通報をしたことを理由としてされたもの」と推定される規定も新設されました。
2.通報妨害の禁止
正当な理由がなく、公益通報をしない旨の合意の締結を求めるなどの、公益通報を妨げる行為を禁止する規定が新設されました。また、これに違反した「通報しない合意」などは無効とされています。NDA(秘密保持契約)や退職合意の中の文言が公益通報を妨げるような表現の場合、無効と判断される可能性があります。
3.制度周知の義務化
内部通報制度の社内体制を整備する義務の一環として、全社員に対して、整備した体制を周知することが法律上の義務とされます。
その他、事業者への社内体制整備の徹底などのために、消費者庁の勧告に従わない場合の命令権や命令違反に対する刑事罰の規定などが新設され、消費者庁の権限が強化されます。
4.通報者特定の禁止
正当な理由なく通報者を特定することを目的とする行為を禁止する規定が新設されました。
5.保護対象の拡大
公益通報者の範囲にアルバイト・派遣労働者・退職者などのほか、新たにフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)の対象となるフリーランスなどが追加され、保護対象が拡大されます。
内部通報制度の実効性を高め、よい企業風土につなげるために
今回の法改正で制度周知が義務化されているように、内部通報制度の実効性を高めるには、全社員が制度を正しく理解することが不可欠です。
当社のeラーニングでは、内部通報制度の目的と意義を理解し、不正行為による損失や内部通報制度が機能しない場合のリスク、通報すべき事案や通報者を保護する仕組みなどを押さえ、適切な通報につながる知識を身に付けます。

制度周知は、法令対応にとどまらず、組織全体の知識の底上げとコンプライアンス意識の醸成といった効果が期待できます。ぜひeラーニングのサンプルをご検討ください。