厚生労働省において、2017年5月から2018年3月の間に、計10回にわたり「職場のパワーハラスメント防止対策に関する検討会」が実施されました。※以下「パワーハラスメント」はパワハラと記載
この検討会では、「パワハラの定義」や「実効性のある職場のパワハラ防止対策」について、有識者の方々の意見交換や内容のとりまとめが行われました。その内容は、企業のパワハラ対策担当者様には、ぜひ知っておいていただきたいものとなっています。
本ブログでは、検討会の内容のなかでも特に押さえておきたいポイントを簡単にまとめました。内容は、「職場のパワーハラスメント防止対策に関する検討会」報告書、およびクオレ・シー・キューブ社主催のハラスメント対策説明会(2018年4月実施)の内容、資料を参照し、作成しています。
クオレ・シー・キューブ社代表の岡田康子氏は、同検討会の委員も務めており、弊社のハラスメント防止eラーニング教材監修者でもあります。
職場のパワーハラスメントの概念
パワハラは、「指導」と「パワハラ行為」の境界がどこにあるのかを判断することが難しく、報告書でも「(相談窓口に寄せられる相談のなかで)本当にパワハラに該当する相談を見極めることの難しさ」や「実態把握の難しさ」が述べられています。
こうした背景もあり、「パワハラの定義」を明確にすることが求められており、検討会でも「職場のパワーハラスメントの概念」として、下記が示されました。
※( )と数字は、EPにて追記
同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの(①)職場内の優位性を背景に、(②)業務の適正な範囲を超えて、(③)精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為
職場のパワーハラスメントの要素の具体的内容
パワハラの概念をさらに詳しく説明するものとして、「パワハラの構成要素」もまとめられました。概念の①~③に沿って、みていきましょう
①優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
円卓会議の概念では、「職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に」という要素が示されているが、それ以外にも人間関係や専門知識などさまざまな優位性が含まれます。
【「優越的な関係(優位性)」に当てはまるもの】
職場上の地位が上位の者
(例)
- 上司
- 先輩(評価の力)
- 正社員と派遣社員
業務上必要な知識や豊富な経験を有している
(例)
- 同僚
- 部下(専門性の力)
集団による行為
(例)
- 学校
- 部や課内
- 部下から上司(集団の力)
②業務の適正な範囲を超えて行われること
円卓会議の概念では、「業務の適正な範囲を超えて」という要素が示されているが、業務上の指導との線引きが難しく、個人の受け取り方によって、業務上必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合あります。しかし、これらが業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントには当たらないとされました。
【「業務の適正な範囲を超える」に当てはまるもの】
明らかに業務上に必要ながない
(例)
- 休み時間に何か買いに行かせる
- 個人的な引っ越しを手伝わせる
- 休日にゴルフやイベントに付き合わせる(誘うことはOKだが、上司からなど力関係や言い方によって強制感があるのはNG)
業務の目的を大きく逸脱し手段として不適切
(例)
- 長時間立たせたままの説教する
- 過去の話や指導内容に関係のない私生活への叱責や愚痴を言う
⇒遅刻の原因の確認や服装が会社に適していないといった指摘は「適切な指導」なので問題ないが、詮索や個人的な趣味による注意は不可 - 部下に「日頃の態度が悪いと」叱責するメールを部署内の社員をCCに入れて送る
⇒周りをCCに入れることで集団の力も関係してくる
回数や行為者の数、その様態が許容範囲を超える
(例)
- 何回も同じ話を繰り返す
- 集団で個人に指摘をする
身体的若しくは精神的な苦痛を与えること又は就業環境を害すること
円卓会議の概念には、「精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる」という要素が示されています。「精神的・身体的苦痛を与える」又は「職場環境を悪化させる」の判断に当たっては、平均的な労働者の感じ方が基準になります。
【この要素に当てはまるもの】
暴力により傷害を負わせる
(例)
- 殴る、蹴るなどの暴行をする(傷害事件にもなる)
著しい暴言を吐くなどにより人格否定
(例)
- 死ね、殺すなどの発言を言う
- 「お前」や「おい」などと呼び、名前で呼ばない
大声で怒鳴ったり執拗に繰り返し叱責するなど恐怖を与える
(例)
- 机を叩いたり、書類を投げる
- 「出来の悪い奴はいらない」「無理ならやめてもいいんだよ」と言い、退職や左遷への圧力をかける
- 常に職場で怒鳴る
⇒第三者への悪影響にも繋がる
長期にわたる無視や能力に見合わない仕事の付与など就業意欲を低下させる(持っている能力とかけ離れたレベルの低い仕事を任せる)
(例)
- 成績が悪いからと、交代制の掃除を罰として1人でずっとやらせる
⇒結果が出てからのルール変更やマイナスのインセンティブは、就業
意識低下に繋がる - 業務に関する質問に対して、「とにかく自分で考えてやってください」と言うだけで、何も教えない
⇒まずは考えてみて、その後フォロー、アドバイスであればOK。返答時の言葉によって受け止められ方が変わる
さらに、このパワハラの概念に当てはまる行為の典型例として6つの行為類型も示されました。
6つの行為類型
- 暴行・傷害(身体的な攻撃)
- 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃) 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
- 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
- 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じるこ とや仕事を与えないこと(過小な要求)
- 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
社内でパワハラ防止教育を行う際、「どういった言動がパワハラに当たるのか」について、全社員が共通の知識を持つことは非常に重要です。今回の検討会で示されたパワハラの概念や行為の典型例は、そのよりどころとなる重要な指針だといえるでしょう。
なお、弊社のハラスメント防止eラーニングは、この検討会で示された内容に沿った構成になっているだけでなく、全社員が自身の職場に結び付けて理解でき、ハラスメント問題を「自分事」としてとらえることができる内容になっています。パワハラとなる行為だけでなく、「パワハラにならない行為(適正な指導)」も示すことで、全社員がパワハラに関する共通認識を持つことができ、自身の行為を振り返るきっかけづくりとしてもご活用いただけます。
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また、企業・組織におけるハラスメント防止施策についてさらに詳しく知りたい方は、弊社が制作した資料「社内の『ハラスメント防止施策』を成功させるためのポイント集」も合わせてご参照ください。
ハラスメント防止施策の「全体像」や、現状把握のヒント、従業員教育をする際の各種手段のご紹介など、施策成功のポイントをわかりやすくまとめております。
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