パワハラとマネジメントの境界線とは?~委縮しない職場づくりのために~
昨今、「ハラスメント防止研修」や「パワハラ研修」のニーズが高まるなかで、現場の管理職からよく聞かれるのが「どこまでがマネジメントで、どこからがパワハラなのか分からない」「パワハラと指導の境界線を教えてほしい」という声です。
部下への注意や指導の場面で、「それってパワハラじゃないんですか?」と返されてしまった経験があると、管理職側も、その後厳しい指導や注意を躊躇しがちになるかもしれません。これは組織においては決してプラスとなる状況ではなく、マネジメントに対する過剰な反応が管理職を委縮させ、結果的に組織の生産性低下を招いてしまう事例ともいえます。

今回のコラムでは、「パワハラとマネジメントの境界線」について整理しながら、組織全体で共通認識を持つための対策についてとりあげます。
指導とパワハラの違いとは?
まず押さえておきたいのは、「パワーハラスメント」にあたる行為は、法律によって定義されているという点です。以下の3つの要素すべてを満たすものがパワハラとされています。
パワハラの定義
- 優越的な関係を背景とした言動であって
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
- 労働者の就業環境が害されるものであり
1.から3.までの要素を全て満たすもの
一方、業務上の必要な指導や注意は、上記に該当しなければパワハラにはあたりません。
なぜ「指導」がパワハラと誤認されてしまうのか?
適切な指導がパワハラと言われてしまう背景には、社会全体のハラスメントへの意識の高まりがあります。管理職が業務上必要だとして行った注意や指導が、「感情的だった」「言葉がきつかった」「皆の前で言われて恥をかいた」といった理由で、部下からパワハラと受け取られてしまうケースは少なくありません。
このようなケースには、先に示した「パワハラの定義」に全く当てはまらないにもかかわらず、受けた側の「パワハラだと思ったから」という一方的な感情を理由に、「パワハラだ」と言われてしまうケースもあります。最近では、このように「なんでもハラスメントだと言われてしまう」状況を「ハラスメント・ハラスメント(ハラハラ)」という言葉で表すこともあるようです。パワハラの定義に当てはまるような行為に対しては、被害者や第三者が声を上げられることは重要ですが、指導とパワハラの境界線があいまいになり、適切な指導がパワハラと誤認されてしまう状況は変えていく必要があります。
境界線を明確にするために必要なのは「共通認識」
必要な指導を「パワハラだ」と言えてしまう状況をなくしていくには、どうすればよいのでしょうか。その鍵は、「全員が共通認識を持つこと」です。具体的には、以下のようなことを学び、組織内で価値観を共有することが必要です。
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当社では、共通認識の醸成を得意とするeラーニングの利点を生かしながら、「パワハラ防止」について学習できるeラーニング教材をご提供しています。eラーニングは、時間や場所を問わず受講できるため、全社員への浸透にも適しています。「ハラスメントとマネジメントの境界線」は、お客様から多くお問い合わせをいただくテーマのため、教材もいくつかの種類をそろえています。
教材例① 「昔ながらの指導」や「べき論」が、結果として相手を追い詰めてしまい、パワハラとなってしまうケース

教材例② 個人の事態の受け止め方や、そこから生まれる感情が原因で、パワハラではないやりとりがパワハラと誤認されてしまうケース

管理職も部下も。みなが安心できる職場づくりを
パワハラ防止に必要なのは、単に“叱らない”“厳しい指導はしない”ことではありません。むしろ、適切なフィードバックと指導があってこそ、人材も成長し、組織も健全に機能します。なにより、「パワハラとマネジメントの境界線」を正しく理解し、共通認識を育てることは、管理職や部下といった役職・役割に関係なく、貴重な人財を守ることにもつながります。
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