確定拠出年金(DC)における継続投資教育の必要性って何だろう?
DC導入企業の3割程度は投資教育を未実施
我が国において個人金融資産が圧倒的に預貯金と保険に偏っている現実を是正して、投資信託等を通じた資本市場での運用へ振り向けるには、投資教育による基礎知識の普及が不可欠だといわれて久しい。
確定拠出年金(DC)においても例外ではなく、加入者の半数近くが預金など元本確保型商品に投資しており、そこにおける投資教育は、この我が国の現状を打破するきっかけとして大いにその実施・普及が期待されている。
しかしながら、DC導入企業の3割程度は導入時教育は実施するも、継続教育は未実施だといわれている(※)ことに加え、実施している企業のなかにはテキスト配布で済ませている企業もあり、本当に加入者それぞれの金融リテラシーを向上させられるような機会の提供、つまりは継続投資教育のメニューができているのかは疑問が残る状況である。
※NPO法人確定拠出年金総合研究所が実施した「「第 13 回:企業型確定拠出年金制度の制度運営に関する調査(平成26 年 11月)」の結果
投資教育には主体的に学んでもらう工夫が重要
2016年の確定拠出年金法の改正において、継続投資教育を配慮義務から努力義務に引き上げ、企業の積極的な取り組みを促すことが定められた。事業主に対しては、継続投資教育を計画的に実施していくことが求められている。
しかし、ここで重要なことは、教育は、学ぶものの主体性を前提とした学習支援に徹する必要があり、加入者(国民)の主体性抜きにはなりたたないという視点だ。多くの加入者(国民)は、預貯金や保険から投資に向かう必要がないと考えているから投資やその学習に消極的なのであり、投資に必要性を認めれば、誰でも、投資を主体的に学ぼうとするはずである。
現在、金融庁は、次のような徹底した顧客(国民)の視点で、金融機関と金融庁の改革を強力に推進している。
【投資教育の必要性】(金融庁のホームページより)
- パーソナル・ファイナンス(個人の生活設計)における資産形成に証券投資は欠かせない。
- 投資教育は、個人の資産形成と市場経済が円滑に機能するうえで重要なインフラである。
つまり、金融庁のいう投資教育とは、「国民(加入者)を主体と位置づけ、国民(加入者)の視点に沿って主体的に学べる適切な内容の提供をすること」と言っていいだろう。
65歳で定年、そして人生100年時代を迎え、日本の年金制度や今後の経済成長を考えると「何もしない」ということのリスクの方が高い。現在の平均寿命で考えても、その後のセカンドライフは約15年~20年以上ととても長く、また年々その期間は伸びている。
今後の増税や物価上昇を考えるとお金を単に稼ぎ、貯めているだけでは長いセカンドライフの資金に不足分が生じてしまう可能性があることは明白なのである。
投資教育メニューにも複層化が必要
多くの集合研修の講師を務めた筆者の経験上の平均的加入者イメージから申し上げれば、①教育なしでも自ら取り組む投資積極層が20%、②投資中立層が60%、③企業の都合・親の言いつけなどの理由から、商品選択を自ら行わない投資無関心層が20%と大別される。
このような状況で費用対効果の高い投資教育を行うには、まず②投資中立層を主なターゲットに運用の基礎を学ぶ意欲を向上させ、①投資積極層に向かわせることが有効であると考える。そして、もちろん最終的には無関心層を含む全ての加入者がそれぞれの金融リテラシーを向上させられるような機会の提供、つまりは継続投資教育メニューの複層化が、DC制度の健全な発展には欠かせない。
これらの施策を実現するためには、物理的な制約のある集合研修のみならず、eラーニングの活用を通じた継続投資教育の効率的実施とともに、継続投資教育の内容面、特に質的拡充を図ることが求められる。
また、これからの投資教育は、単に金融商品の特徴の紹介や実施率を高める施策だけでは十分ではなく、主体的な資産形成を促す工夫といったを含めた、質的な充実が欠かせない。
「投資」とは将来のための計画性のある資産運用だ。よって、加入者が老後の豊かな生活を具体的に思い描くライフプランの検討にこそ、投資学習支援の鍵はあると私は考えている。この点については改めて別のコラムで詳しく述べたい。
有限会社あおむしマネジメント(AMC) 代表取締役 佐々木敦也
「必ずよくわかる新しい年金制度401k(総合法令出版)」他 著書多数
確定拠出年金eラーニング監修
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